小学6年生用七宝焼講習会
一年前にご依頼頂いた小学校6年生の卒業制作、いよいよ
実施する時が迫ってまいりました。
担任の先生は昨年夢大学を受講して下さった方、そして
そのご友人で同じく夢大学七宝焼の経験を持つ小学校の
先生もご一緒です。
創るモノはハガキの大きさの額、壁掛けにも立て掛けても
使えるものです。
大人になってからも飾って欲しいと先生方は希望されて
ましたが、むしろ本人達が巣立った後ご父兄が飾って
お子さん達がそこで育った軌跡に想いを馳せる...
そんな役目を担うような気がします。
二つの作品はスタート時点で非常に対照的です。
上は何を創るか具体的イメージを持たず真っ白で
取り組むスタイル、下はカワセミをテーマに最初
から決めている場合。
七宝焼は粉状の釉薬を盛って高温焼成する作業。
その基本を踏まえ、焼き重ね、技法選び、金銀箔、
フリットなどのトッピングまで工程は長いです。
スタートとゴール地点の間の道は真っ直ぐでは
なく、「何これ?」や「どうなっちゃうの?」の
不安も途中に転がっていますが、心を開放して
自由に銅板の上で遊んでもらう、その都度マメに
対話することで、作者の意図をキャッチ、イメージに
近づけるのが私の仕事。
二つとも自由に線を描いてもらい焼き付けました。
最初に渡したのは6色の比較的薄い透明色、全部
使っても使わなくても良いということで前面に
盛ってもらい焼成。(個別に事前対話が可能なら
最初の色選びも細かく出来ますが、大勢で、時間
制限のある場合は一回目の釉薬は共通の色準備)
ここから一人一人のイメージや希望、好みを聞き、
複数の色を出します。一回目の単色の色に別な色を
重ねて画面に深みを持たせます。
3回目からは具体的に描きたいものに入ります。
私の場合はテーマに沿って作品をまとめる方法と
して、ここらへんでその作品のタイトルを本人と
相談しながら決めていきます。
上の場合は釉薬の盛り方が流れるようだったこと、
オレンジや黄色の木の実を付けたいとの希望だった
ので、風の流れを金箔で強調してもらい、透明
フリットをまぶすことで背景をより複雑にしました。
タイトルは「森の中、時は流れ...」です。
下は最初から図鑑にある「カワセミ」を中央に
描きたいという希望があったので、最初の線で枝や
葉を描き割って頂きましたが、あまり具体的にせず
それらしい線は30%位に抑えてもらい、遊びの
線を増やしてもらいました。
2回目は3回目からのカワセミを入れるバック
ですが、あまり木々とか葉、枝にこだわらず、
一回目の平坦な色をつぶすような形で色を重ねて
もらいました。具体的なイメージを持っている
場合、この辺りまでは非常に不安な思いで作業
されていると思いますが、ゴールでまとめる為に
仕方がありません。(七宝の経験が少ない場合)
次からはカワセミを描きこみ、金箔やフリット、
全体のバランスを見て止まり木を一本入れて
完成です。(2~3回そのたびに焼成しました)
カワセミは別名ジュエリーなんとか?バードかな?
タイトルはそのままそれに決まりました。
具象的なモノを入れたい場合ですが、筆で色を塗る
のと違い、七宝は粉を持って電気炉で焼成する作業、
精密画にはなりませんし、色を金属の酸化物が原料
ですから、すべての釉薬の性質が違います。
簡単に色も作れません。つまり、キチンとした線や
書道のような迫力あるかすれ線も経験の浅い方には
難しい作業です。
だから、最初からファンタジー、なんとなく、そして
そこに漂う作者の温かい想い、その時の心境などを
焼きこんでもらうことを心掛けて指導しています。
長々とご精読ありがとうございました。